[読書感想文] 束の間の一花 1巻 - タダノなつ
- Twitter で 1-3 話を作者が公開しているのを見て 、流石に好きすぎる話だったので気づいたら購入していた。現在漫画は完結していて、Palcy で最後の方まで読める。僕は読んだ。ここでは 1 巻について触れる。2 巻が 6 月下旬に出るようなので、そしたらまた購入して感想文を書きたい。
- 以下ネタバレを含む個人の感想文です。
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終わりのある物語は輝く
人生には限りがあります。もし仮にいつまでも人生が続くのだとしたら、またいつでも会えるのだから、誰かといつまでもずっと一緒にいたいとすら思わないでしょう。でもいつか終わりが来ると知っていながら、僕たちはまた明日ね~と笑って手を振ることができる。それはなぜかと言われたら、きっと、「いつか終わりが来る」ということが身体性を持って迫ってきていると感じていないからなのではないでしょうか。
では「いつか終わりが来る」ことを身をもって感じてしまったら?余命いくばくもないと診断を下されてしまったら?そのとき物語はどう動きどう結末を迎えるのか。このお話は、余命を宣告されてしまってから恋に落ちてしまった女子大生と、病気になりもう長くは生きられなくなってしまった教授が、いつか終わりが来ることを知っていながら互いを思ってすれ違い、ぶつかり、そして輝く、そういうストーリーだと感じました。
主人公の女子大生 千田原一花 は能天気な女の子ではありますが、冒頭に書かれているように余命を宣告されてから私のせいで迷惑をかけるわけにはいかないと周りに病気のことを言わなかったり、自分自身も気にしないよう努めたりと、その能天気さは生来のものに加えて病気に正面から向き合うことを避けた反動のようなものからも来ている気がします。病は気からというように、この正面から向き合わないということが大事だったようで、一花はその後先生と出会い、時間を忘れて楽しく過ごすうちに、余命の期限から 1 年が過ぎても生きることができました。
しかし先生が突然大学を辞め、偶然再会したところから物語は動き始めます。
先生と出会ってからの 1 年間、時間はたくさんあったのに、なぜ千田原さんは先生ともっと近づこうと、踏み出そうとしなかったのでしょうか?個人的には、出会ってから 1 年間の一花は先生といることが当たり前のように感じて、普通の女の子として生きられていたからこそ余命を超えられたのではないかと思っていて、それが先生が急に大学を辞めてしまったことによって、先生が病気だと知ったことで、「いつか終わりが来る」ことを意識して、それが身に迫ってきたからこそ、正しいか分からないけど踏み出せたのではと感じました。これが逆説的に長生きできないことに繋がっていたら悲しいし、ここが弟の大樹くんの立場につながるのかもしれません。この、いつか終わりが来る、私だって死んでしまう、このことはプラネタリウムのシーンで強く描かれていて、ここで初めて一花は自分がいつか死ぬことを強く実感します。それまでは一緒にいたいと思う気持ちが先行して向き合っていなかった現実と向き合う。たぶんここがひとつターニングポイントになっていて、ここまでは日常パートでここから一気に物語が転換していくように感じられました。
いつか終わりが来る、そのことを頭で分かっているふりをしながら平気で生きていられるのはなぜなのか。それはきっと肉体に真に出来事が迫ってきていないからで、それは楽しくていつまでも続いてほしいと思う一方で、残酷にも終わりは確実にやってくる。でも、終わりがあるからこそ強く輝く物語もあって、そういう切なさはとても美しいものだと思います。
千田原一花がかわいい
マジで千田原さんかわいすぎんか!?特に先生と話すときに目が輝くのが最高の演出。恋する乙女!という感じのパワーで、もうかわいい~しか言えなくなってしまいます。恋をするきっかけとなったと思われる"どうせなら喜んでくれよ"もなんというか昨今のラブコメ的には、運命の人という割にそんなに強い動機付けではなく、どうやらその瞬間はきっかけでしかなくて、一年間講義を聴いて萬木先生のもとに通いつめて話をしているうちにどんどん好きになっていったんだろうなあと推測できるのが、なんというか自然な感じでとても好きです。きっと先生と一緒にいるときは時間を忘れてイヤなことも忘れて楽しく過ごせる、その時間の積み重ねが千田原さんを生かしてくれて、いつまでも続いてくれたらいいのにと思うような時が先生を千田原さんの運命の人にしたのだと思います。
あと作者の絵がよすぎる!再開したときの"千田原さん…か?(覚えてた)"のコマとか!"私 先生のことが好きです"の次のコマ"ずっと…!!"とかな!!!よさみが深すぎる!!!かわいい!!!
なんでこんなかわいい女の子に余命設定したんや!泣きそう!!
終わりに
早く 2 巻を購入したいです。